禅を行う科学者
ここのレビューを見るだけだと、どこにでもありがちな自己啓発や抗鬱の本で提示されていることと変わりがないように思えるだろう。確かにその様な面は多々ある。いや、対処法として挙げられているもののほとんどは、そうだといってもいいだろう。著者は長年座禅をやっている方のようで、座禅の小話のようなものも多く挿入され、マーフィーの法則のマーフィー牧師の話などから脳を作から「脳を作り変える習慣」として展開されていく。 ただ、理論が違うのだ。うつ病とは、生化学的見地から言えば「脳内のセロトニンなどの神経伝達物質の不足」と見ることができると思う。そしてその対処法としてセロトニンの再吸収阻害剤が、抗鬱の薬として使われている。 この本は、まず現代の鬱に対する考え方、脳の概要の説明から始まり、先にあげたセロトニンと、脳内麻薬などといわれ有名になったドーパミンの二つの神経伝達物質、そしてそれらが働く系をさまざまな側面から分析し考察を加え、解説していくという流れになっている。このあたりは、非常に分かりやすく、成人病やガン、コルステロールの説明などと鬱の絡めは、それを知る者に容易にカオス理論や複雑系などを連想させるものであり非常に興味深いものであろう。しかも、もしこのような科学的な説明を苦手とする人が軽く読み飛ばしていっても問題なく読み進めていけるようになっているように感じた。 私にはこの本が、うつ病で苦しんでいる方に直接的な効果をあげるのかどうかは分からない。しかし、このような構成の仕方と著者自身の経験を赤裸々に示す勇気と、先にあげたような言葉に他の本にはない力を持たせているのだろう。
三笠書房
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